司法試験・予備試験はギリギリ合格でいい ― 合格最低点から考える優先順位
働きながら満点を目指すと、たいてい途中で折れます。合格最低点に到達することを目標に置いたとき、限られた時間をどこへ投下するのか。ギリギリ合格研究所の最初の回として、予備試験と司法試験の違いを科目の優先順位にどう落とすかを記載します。
ギリギリ合格研究所
研究員
まずはじめに
Xを開くと、高い順位や点数とともに合格を報告する人が流れてきます。到底そこには届かない、とモチベーションが下がったことはないでしょうか。予備校の添削で細かく指摘されて、「そこまでできない」と思ったこともあるかもしれません。
高得点は、法律事務所への就職・転職で意味を持つ場面があるのだと思います。ただ、「合格」という一点においては、最低点に到達すれば同じ合格者です。
ギリギリ合格研究所は、合格最低点に到達するために、限られた時間をどこに置くかを考える企画です。働きながら令和7年の予備試験に合格した筆者(短答162点、論文279.39点、口述120点)が、自分がどう配分し、その結果どうなったかを書いていきます。
予備試験と司法試験の違い
予備試験の戦略を立てるには、まず司法試験との違いを押さえる必要があります。大きく3つあります。
- 日程:予備試験は短答・論文・口述が別日程で行われる。司法試験は短答と論文をまとめて受ける一発勝負。
- 科目:予備試験には実務基礎科目(民事・刑事)がある。司法試験にはない。
- 配点:予備試験は基本7科目の配点が短答・論文とも横並び。司法試験の短答は憲法・民法・刑法の3科目に絞られ、民法の配点が他より重い。
順に、戦略にどう効くのかを見ていきます。
違いその1 ― 短答の位置づけ
予備試験の短答の結果は、論文式には引き継がれません。つまり、合格ラインに届くことだけが目標で、それ以上取っても予備試験合格には影響しません。
一方、司法試験では短答の結果が総合の合否判定に残ります。総合点に占める割合は9分の1で、あなどれない大きさです。
ここから、予備試験の短答は合格ラインを目安に組み立てればいい、ということになります。合格ラインはおおむね160点前後に落ち着いています。一般教養が60点分あるので、そこで何点取れそうかを見積もり、残りを法律科目で埋める形で逆算します。
本来は、司法試験で3科目に絞られることを見据えて、憲法・民法・刑法を厚めに仕上げておくほうが望ましいはずです。ただ、筆者は憲法と民法の優先順位を下げるという逆の選び方をしました。 短答の通過を最優先にした結果であって、司法試験受験時に大変な思いをすることになりました。笑
しかし、予備試験合格という点においては正しい戦略の1つだと思います。
違いその2 ― 実務基礎科目
予備試験の論文式では、実務基礎科目の配点は100点で、全体の2割を占めます。
この科目は、他と性格が違います。やるべきことが比較的はっきりしていて、努力した文だけ点が取れます。 一方、基本7科目に追われて手薄になる受験生が一定数います。配点が比較的大きく、努力が反映されやすく、かつ他人が勉強していないところ。ギリギリ合格を狙う立場からすると、いちばん条件がそろっています。
筆者の論文の順位は59位でしたが、実務基礎でAを取れたことが大きかったと考えています。近年、民事実務基礎は難化しています。難しくなるほど、手が回っていない層との差は開きます。実務基礎科目は、高得点を取りに行く価値のある科目です。
違いその3 ― 配点
予備試験は、科目間で短答・論文ともに配点が同じです。つまり、優先順位は、配点ではなく科目の性質で決めることになります。
司法試験は、論文の配点こそ横並びですが、最終合否に影響のある短答式が民法・憲法・刑法の3科目で、民法が他の2科目より重く設定されています。
この事実と科目の性質から、力を入れる先を決めます。筆者が予備試験でとっていた優先順位は、次のとおりです。
刑法 = 民訴 = 刑訴 = 実務基礎 > 商法 = 選択科目 > 民法 > 行政法 > 憲法
上位に置いた刑法・民訴・刑訴は、問題集を10周ほど回しました。といっても、10回とも同じような解き方をしていたのではなく、回数ごとにメリハリをつけるなど工夫しました。一方、憲法はほとんど問題集を解いていません。
薄くするのは、リスクを取るということ
優先順位を下げるという判断は、リスクを取るということです。 手薄なところが出てくる年は実際にあります。筆者の場合、合格した年の民訴の第一問は問題集で飛ばしていたところが出ました。また、憲法をほぼ勉強していなかったので、司法試験の憲法の短答に戦々恐々としていました。
それでもこの戦い方を採用したのは、全部を満遍なくやろうとするほうが危ないと考えたからです。全部が中途半端という状態は、どの範囲が出ても失点するという意味で、一点集中よりも脆いかもしれません。
戦略とは、「戦を略す」と書きます。
司法試験予備試験は、親が裕福で時間がたっぷりある東大、慶應、早稲田といった基礎能力の高い大学生や大学院生との戦いになります。
特に時間に限りのある社会人がどこに時間を投下し、どのように勉強を進めていくのか。
それを遂行する根性と同じぐらい、何に集中するのかを考えることが司法試験突破の鍵となると考えています。
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